家族信託の費用の内訳 登録免許税・公証人手数料・専門家報酬
家族信託の費用は、主に4つに分かれます。不動産を信託するときの登録免許税、契約を公正証書にするときの公証人手数料、契約書作成や登記を頼む専門家の報酬、信託口口座の手数料です。このうち金額が法令で決まっているのは、登録免許税と公証人手数料です。
信託の登記の登録免許税は、不動産の価額の0.4%が原則です。土地は租税特別措置法の軽減があり、令和11年(2029年)3月31日までは0.3%です。専門家の報酬は事業者ごとに違うため、出どころを示して紹介します。この記事は一般的な情報です。個別の判断は司法書士や弁護士、税理士などの専門家にご相談ください。内容は2026年11月3日に確認しました。
費用の全体像
家族信託を始めるときにかかる主な費用を、決まり方ごとに並べます。

表は左右に動かして読めます。
| 費用 | かかる場面 | 金額の決まり方 |
|---|---|---|
| 登録免許税 | 不動産を信託して登記するとき | 登録免許税法・租税特別措置法 |
| 公証人手数料 | 信託契約を公正証書にするとき | 公証人手数料令 |
| 専門家の報酬 | 契約書の作成、登記の申請などを頼むとき | 各事業者の料金 |
| 口座の手数料 | 信託口口座を開くとき | 各金融機関の料金 |
不動産がなく金銭だけを信託するなら、登録免許税はかかりません。契約書を公正証書にしなければ、公証人手数料もかかりません。ただし金融機関が公正証書を求めることがあります。この点は家族信託の始め方で説明しています。
信託登記の登録免許税
不動産を信託すると、親から子への所有権の移転の登記と、信託の登記を同時に申請します(不動産登記法98条1項)。2つの登記で税の扱いが違います。

- 所有権の移転の登記: 委託者から受託者に信託のために財産を移す登記は、登録免許税がかかりません(登録免許税法7条1項1号)
- 所有権の信託の登記: 不動産の価額の1000分の4(登録免許税法 別表第一 1号(十)イ)
- 土地の所有権の信託の登記: 平成25年4月1日から令和11年3月31日までは1000分の3(租税特別措置法72条1項2号)
軽減の対象は土地だけです。建物の信託の登記は1000分の4のままです。
税額のもとになる「不動産の価額」について、国税庁のタックスアンサー(No.7191)は、固定資産課税台帳に登録された価格がある場合は原則その価格だと説明しています。登録された価格がない場合は登記官が認定した価額になります。その場合は管轄の登記所に問い合わせるよう案内しています。
計算の例を示します(端数の処理は省きます)。
表は左右に動かして読めます。
| 不動産 | 固定資産課税台帳の価格 | 税率 | 登録免許税 |
|---|---|---|---|
| 土地 | 2,000万円 | 0.3% | 6万円 |
| 建物 | 1,000万円 | 0.4% | 4万円 |
この例では、自宅の土地と建物を信託すると、登録免許税は合計10万円です。
公正証書にするときの公証人手数料
公正証書の作成手数料は、公証人手数料令で決まっています。額は法律行為の目的の価額に応じて決まります(手数料令9条・別表)。日本公証人連合会も同じ表を載せています。

| 目的の価額 | 手数料 |
|---|---|
| 50万円以下 | 3,000円 |
| 50万円を超え100万円以下 | 5,000円 |
| 100万円を超え200万円以下 | 7,000円 |
| 200万円を超え500万円以下 | 13,000円 |
| 500万円を超え1,000万円以下 | 20,000円 |
| 1,000万円を超え3,000万円以下 | 26,000円 |
| 3,000万円を超え5,000万円以下 | 33,000円 |
| 5,000万円を超え1億円以下 | 49,000円 |
| 1億円を超え3億円以下 | 49,000円に超過額5,000万円までごとに15,000円を加算 |
信託の公正証書には、特別の加算があります。信託財産の価額が1億円以下なら、上の額に13,000円が加わります(手数料令22条の2)。
ほかにも次のような費用があります。
- 証書の枚数による加算: 一定の枚数を超えると1枚ごとに300円(手数料令25条)
- 正本・謄本の交付: 紙なら1枚300円(日本公証人連合会の説明)
- 公証人に出張してもらう場合: 日当と旅費(手数料令43条)
信託契約の目的の価額を何で測るかは、財産の内容や契約の書き方で変わります。日本公証人連合会のページにも、信託契約に限った計算例はありません。正確な額は、依頼する公証役場で見積もりを取ってください。
専門家に頼む費用
信託契約書の作成や信託の登記を専門家に頼むと、その報酬がかかります。金額は事業者ごとに違います。ここでは公式サイトや公表資料で確かめた数字だけを紹介します。

家族信託の組成を支援する「おやとこ」(株式会社こころのカンパニー)の公式サイトでは、料金は次のように示されています。
- 初期費用(家族信託組成サポート費用): 231,000円(税込)から
- 初期費用の算定: 信託する財産の金額をもとにする。1億円までは1.1%、1億円超から3億円までは0.55%、3億円超の部分は財産額が増えるほど割合が下がる
- 月額費用(契約締結後の継続サポート): 2,728円(税込)から
- 契約書の作成は弁護士、登記は司法書士が担当し、それぞれ別に費用がかかる
- 契約の作り方や財産の内容によっては、オプション料金がかかる
日本郵便の解説コラムは、専門家に頼むとコンサルティング費用や契約書作成費用で数十万円かかる場合があると説明しています。
金融機関の手数料の例もあります。飯能信用金庫が2023年3月30日に出した発表では、家族信託口口座の口座開設手数料は55,000円(税込)です。
見積もりを比べるときは、総額に何が含まれるかを確かめます。契約書の作成、公正証書の手続き、登記の申請、口座開設の手伝い、開始後の相談のうち、どこまでが料金に入るかは事業者で違います。
信託が続く間と終わるときの費用
信託を始めた後にも、登記や税の手続きが出てきます。

受託者が交代するときの財産の移転の登記は、登録免許税がかかりません(登録免許税法7条1項3号)。
信託が終わって不動産を誰かに移すときは、相手によって扱いが変わります。
- 信託の始めからずっと委託者だけが元本の受益者で、その委託者本人に戻す場合: 非課税(7条1項2号)
- 同じ条件の信託で、受け取る受益者が信託を始めた時の委託者の相続人である場合: 相続による移転の登記とみなす(7条2項)。相続による移転の税率は1000分の4
- どちらにも当たらない場合: その他の原因による移転として1000分の20(別表第一 1号(二)ハ)
親が亡くなって信託が終わり、子が残った不動産を受け取る形はよくあります。名古屋国税局は平成30年12月18日の文書回答で、委託者の相続人である子が帰属権利者として取得する事例について、7条2項が適用されるという照会者の見解を認めました。ただし回答は、照会の事実関係を前提とするものだと断っています。契約の書き方で結論が変わる可能性があるので、司法書士や税務署に確かめてください。
受託者は毎年、税務署に信託の計算書を出す場面があります。税理士に頼めば、その報酬もかかります。届出の中身は家族信託の税金と毎年の届出で扱っています。
出典
- 登録免許税法(e-Gov法令検索・デジタル庁) https://laws.e-gov.go.jp/law/342AC0000000035
- 租税特別措置法(e-Gov法令検索・デジタル庁) https://laws.e-gov.go.jp/law/332AC0000000026
- 不動産登記法(e-Gov法令検索・デジタル庁) https://laws.e-gov.go.jp/law/416AC0000000123
- 公証人手数料令(e-Gov法令検索・デジタル庁) https://laws.e-gov.go.jp/law/405CO0000000224
- 国税庁 タックスアンサーNo.7191「登録免許税の税額表」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/inshi/7191.htm
- 名古屋国税局 文書回答事例「信託の終了に伴い、受託者兼残余財産帰属権利者が受ける所有権の移転登記に係る登録免許税法第7条第2項の適用関係について」(平成30年12月18日) https://www.nta.go.jp/about/organization/nagoya/bunshokaito/sonota/181200/index.htm
- 日本公証人連合会「手数料」 https://www.koshonin.gr.jp/notary/ow12
- 株式会社こころのカンパニー「家族信託のおやとこ」(ご利用料金) https://kokorono.co.jp/oyatoko/
- 日本郵便「「家族信託」ゆうちょ銀行でできる?手続きや流れを専門家が解説!」 https://www.post.japanpost.jp/life/inheriting/column3/index.html
- 飯能信用金庫「家族信託取次サービス・信託口口座の取扱開始について」(令和5年3月30日・PDF) https://www.shinkin.co.jp/hanno/news/23/20230401_3.pdf
いずれも2026年11月3日に確認しました。専門家の報酬は事業者が公表している料金で、法令で決まった額ではありません。