家族信託の手引き

家族信託と信託銀行の商品のちがい 民事信託と商事信託・信託業法・信託協会

内容の確認日: 2026年11月3日

家族信託と信託銀行の商品は、どちらも信託法にもとづく信託ですが、受託者と仕組みが違います。家族信託では、受託者は多くの場合、委託者の家族や親族です。信託銀行などの商品では、受託者は信託業を営む金融機関で、内容はあらかじめ商品として決まっています。

信託協会が紹介する遺言代用信託は、金銭を預けて、亡くなったあとの受取人と受け取り方を決める商品です。自宅や賃貸物件の管理を家族に任せたい場合は、家族信託の領域になります。この記事は一般的な情報で、個別の判断は司法書士・弁護士・税理士などの専門家と、各金融機関にお願いします。内容は2026年11月4日に確認しました。

民事信託と商事信託の分かれ目

信託業法2条1項は、信託業を「信託の引受けを行う営業」と定めています。信託業は、内閣総理大臣の免許を受けた者でなければ営めません(同法3条)。銀行などの金融機関は、金融機関の信託業務の兼営等に関する法律1条により、内閣総理大臣の認可を受けて信託業を営めます。

東京・丸の内のオフィスビル
写真: Asanagi / CC0(Wikimedia Commons)

家族信託は、法令上の定義のない呼び名です。日本司法書士会連合会のガイドラインは、民事信託を「信託業法の適用を受けない信託」と定義しています。同じガイドラインは、民事信託の受託者は専門職ではなく、委託者の親族などが担うことが多いとしています。

報酬の扱いにも違いがあります。信託法54条は、商法512条の適用がある場合のほか、信託行為に信託報酬を受ける定めがある場合に限り、受託者は信託財産から報酬を受けられると定めています。家族が受託者のときは、契約に定めがなければ報酬は受けられません。

名前の使い分けは次のとおりです。

  • 民事信託(家族信託): 営業としてではなく、家族などが受託者になる信託。
  • 信託銀行などの信託商品: 信託業の免許または兼営法の認可を受けた金融機関が、営業として引き受ける信託。

家族信託の基本は家族信託とはの記事で説明しています。

信託銀行などの代表的な商品

信託協会は、個人向けの信託商品として、遺言信託、遺言代用信託、金銭信託、不動産の信託などを紹介しています。財産の承継に関わる主なものは次の2つです。

銀行の本店別館ビル
写真: Hirho / CC BY-SA 4.0(Wikimedia Commons)

遺言信託

信託協会の説明では、遺言書の作成の相談から、遺言書の保管、遺言の執行までを一貫して支援するサービスです。信託銀行等は遺言執行者になります。保管できるのは原則として公正証書遺言だけで、自筆証書遺言などは原則として預かれません。遺言執行では、遺言内容の披露、遺産調査と財産目録の作成、相続税などの申告・納付のサポート、不動産の名義変更による引き渡しなどを行います。

この「遺言信託」は、信託法3条2号の「遺言による信託」とは別のものです。名前が似ているため、混同しやすい点です。信託銀行の遺言信託は、遺言を書いて、その執行を任せるサービスです。手数料は金融機関ごとに異なり、保管や執行の際にもかかることが多いとされています。

遺言代用信託

本人が委託者兼第一受益者になり、信託銀行等に金銭を預けます。生きている間は本人が受益者です。亡くなったあとは、配偶者や子などの第二受益者に財産が引き継がれます。信託協会は「文字通り、遺言の代わりになる信託」と説明しています。

  • 元本保証タイプを扱う金融機関が多く、預金保険の対象となるため、1,000万円までの元本と利息が保証されるとされています。
  • 多くの金融機関では、受益者を相続人や近い親族に限っています。
  • 遺留分を侵害するような設定は、実質的にできないとされています。
  • 通常の相続と比べて、相続税額は変わりません。
  • 管理手数料を無料にするなど、低コストの金融機関が多い一方、手数料は金融機関ごとに異なります。

法律上の遺言代用信託(信託法90条)の仕組みは、遺言との組み合わせの記事でも触れています。

家族信託と信託銀行の商品を比べる

ここまでの内容を、表にまとめます。

木の屋根をもつ日本の伝統的な家
写真: タクナワン / CC0(Wikimedia Commons)

表は左右に動かして読めます。

比べる点家族信託(民事信託)信託銀行などの商品
受託者家族・親族などが多い信託業の免許または兼営法の認可を受けた金融機関
適用される法律信託法。信託業法は適用されない信託法のほか、信託業法・兼営法
内容契約で柔軟に設計する商品として内容が決まっている
預ける財産契約に書いた財産(不動産・預貯金など)遺言代用信託は金銭。遺言信託は遺言の執行
費用契約書づくり、登記、専門家報酬など金融機関ごとに異なる
受益者の範囲契約で決める相続人や近い親族に限る金融機関が多い

家族信託は契約書づくりから登記、受託者の事務まで、家族が関わる部分が大きい仕組みです。受託者の義務は受託者の義務の記事、費用の内訳は費用の内訳の記事で説明しています。受託者になる家族は、信託事務を善良な管理者の注意をもって行う義務を負います(信託法29条2項)。

目的で選ぶ

どちらが向くかは、財産の種類と、家族に任せたいことで変わります。

  • 預けた金銭を、亡くなったあとに決めた形で家族に渡したい: 遺言代用信託。
  • 遺言を書き、その内容の実現を金融機関に任せたい: 遺言信託(遺言執行を含むサービス)。
  • 認知症などで本人が動かせなくなる前に、自宅や賃貸物件の管理・売却を家族に任せたい: 家族信託。
  • 金銭の管理は金融機関に、自宅の管理は家族に、と分けたい: 財産ごとに、両方を使う。

信託した自宅を売る場合の流れは、信託中の自宅を売るときの記事で説明しています。

市役所の庁舎
写真: Suicasmo / CC0(Wikimedia Commons)

金融機関の商品は、申込みの条件や手数料、扱う財産が金融機関ごとに違います。この記事で挙げた内容は、信託協会が紹介する一般的な説明です。具体的な条件は、検討する金融機関の説明を取り寄せて比べます。家族信託を専門家と進める場合の相談先は、専門家の選び方の記事にまとめています。

他の方法との組み合わせ

信用金庫の支店
写真: Hirho / CC BY-SA 4.0(Wikimedia Commons)

家族信託でも、金融機関との関わりは避けられません。受託者が信託財産の預金を管理するには、信託口口座などの開設が望ましいとされています。日本司法書士会連合会のガイドラインによると、対応していない金融機関もあり、対応する金融機関は公正証書による契約書を求めることが多く、契約書の案文を事前に審査する場合もあります。契約を決める前に、使いたい金融機関の対応を確かめます。

信託銀行の商品も家族信託も、財産管理や承継の一つの手段です。身上保護が必要な場合は、成年後見制度との併用も検討します。後見制度との違いは成年後見・任意後見・遺言との違いの記事で説明しています。

家族信託のほうが柔軟に作れる一方で、遺留分や、信託できない財産の問題は残ります。向かない場面は家族信託でできないこと・向かない場合の記事で確認できます。

出典

いずれも2026年11月4日に確認しました。

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